事例・基礎知識
バイブコーディングで失敗する人の共通点5つ——「作れる」の先にある落とし穴
AIツールで誰でもプロダクトが作れる時代。しかし失敗パターンは明確に存在する。バイブコーディングでよくある5つの失敗と、その回避策を解説する。
バイブコーディングで「作れる」ようになった人は増えた。Bolt.new、Lovable、Cursor、Claude Code——どのツールも、自然言語で指示を出せば動くプロダクトを作ってくれる。
しかし「作れる」ことと「うまくいく」ことは違う。
AIコーディングツールの体験談を集めると、成功事例に目が行きがちだが、その裏に何倍もの「途中で止まった」「作ったけど使われなかった」「リリースできなかった」という話がある。
この記事では、バイブコーディングでよくある5つの失敗パターンと、その回避策を正直に書く。
失敗パターン1: スコープが膨らみ続ける
よくある経緯
最初は「シンプルなタスク管理アプリ」だった。AIに「通知機能も追加して」と言ったら5分で追加された。「カレンダー表示もほしい」と言ったら10分で追加された。「ダッシュボードも」「CSV出力も」「チーム機能も」——
AIツールは機能追加のコストを下げすぎた。「簡単にできるなら入れておこう」という判断が積み重なり、3ヶ月経っても公開できていない。最初の「シンプルなタスク管理」の面影はもうない。
なぜ致命的か
機能が増えるほど、テストすべき組み合わせが指数関数的に増える。5機能なら20通りのテストケースで済むものが、15機能になると数百通りになる。AIはそのテストを書いてくれない。
さらに、機能が多いほどセキュリティの攻撃面が広がる。守るべき箇所が増えた分だけ、見落としのリスクも上がる。
回避策
「MVPは3機能以内」を絶対ルールにする。
公開後にユーザーから「この機能がほしい」と言われてから追加しても遅くない。むしろ、使われもしない機能を先に作ることの方が無駄だ。
NotionやGoogleスプレッドシートに「MVP必須」「v2で検討」「捨てる」の3列を作り、思いついた機能をすべてどれかに分類する。MVP必須に入る機能を4つ以上書きそうになったら、どれかを「v2」に移す。
失敗パターン2: ツールを乗り換え続ける
よくある経緯
Bolt.newで作り始めた。途中でLovableの方が良さそうだと聞いて乗り換えた。Cursorの方が自由度が高いと聞いて、今度はCursorに移った。それぞれで「最初から作り直し」が発生し、結局どのツールでも完成していない。
XやYouTubeで「このツールがすごい」という情報が毎週流れてくる。新しいツールを試すたびに、前のプロジェクトが放置される。
なぜ致命的か
ツールを変えるたびに、蓄積がリセットされる。Bolt.newで学んだプロンプトの書き方はCursorでは通用しない。Lovableで構築したSupabase連携はBolt.newに持っていけない。
3つのツールで30%ずつ進めるより、1つのツールで100%まで走り切る方が速い。
回避策
1つのプロジェクトには1つのツールで最後まで行く。
ツール選びに悩むなら、以下のシンプルな基準で決める。
- UIをサクッと作りたい → Bolt.new or Lovable
- 既存コードに手を入れたい → Cursor or Claude Code
- コンポーネント単位で作りたい → v0
決めたら、そのプロジェクトが完了するまで他のツールの情報を追わない。各ツールの詳しい特徴はvibe codingの始め方完全ガイドにまとめている。
失敗パターン3: セキュリティを「後でやる」と決める
よくある経緯
「まずは動くものを作って、セキュリティは公開前にやろう」と思っていた。動くものができた。でも「セキュリティ」が具体的に何を意味するのかわからない。調べるほど難しそうに見えて、手がつかない。そのまま放置している。
なぜ致命的か
セキュリティは後付けが最も難しい領域だ。認証なしで設計したデータベースに後からRLS(行レベルセキュリティ)を追加すると、既存の全クエリを書き換える必要がある。最初から設計に含めておけば1日で終わる作業が、後付けだと1〜2週間かかる。
さらに危険なのは、「後でやる」と決めた瞬間から、リスクを抱えたまま開発が進むことだ。「仮のデータだから大丈夫」と思ってテスト用のユーザーデータを入れていたら、それがいつの間にか本番データになっていた——という話は珍しくない。
回避策
セキュリティは最初に3つだけやる。
全部を完璧にする必要はない。しかし以下の3つは、プロジェクト開始直後にやっておくと後が圧倒的に楽になる。
- 環境変数を使う——APIキーをコードに直書きしない(最初の30分で設定できる)
- 認証を入れる——ログイン機能は最初に実装する。Supabase AuthかClerkを使えば数時間で終わる
- RLSを有効にする——Supabaseを使うなら、テーブルを作ったタイミングでRLSを有効にする
この3つを最初にやっておけば、公開時の「セキュリティどうしよう」問題の7割は解決済みだ。Supabaseを使っているならSupabaseセキュリティ診断でデータ露出リスクを今すぐチェックできる。残りの詳細はセキュリティの基礎ガイドを参照してほしい。
失敗パターン4: 誰のために作っているかが曖昧
よくある経緯
AIツールで「なんか面白そうなもの」を作った。SNSに投稿したら「すごい!」と言われた。でも実際に使い続ける人は誰もいない。「いいね」はもらえるが、ユーザーはつかない。
バイブコーディングは「作る」ハードルを劇的に下げた。しかし「何を作るべきか」の判断力は下げていない。作れるようになった分だけ、「作るべきもの」を見極める力が問われる。
なぜ致命的か
ユーザー不在のプロダクトは、どれだけ技術的に優れていても価値がない。作ること自体が目的になっていると、公開後に「誰も使ってくれない」という現実に直面して、モチベーションが消える。
回避策
「自分が毎日使いたいか」をリトマス試験紙にする。
自分自身がユーザーであるプロダクトは、精度が高くなる。営業なら顧客管理の課題を、CSならFAQ対応の非効率を、マーケターならレポート作成の手間を——自分の業務で感じているペインを解くプロダクトを作る。
自分が使わないものを作る場合は、最低でも3人に「これがあったら使いますか?」と聞いてからコードを書き始める。AIにプロトタイプを作らせてから聞くのではなく、作る前に聞く。作った後に聞くと、相手は気を遣って「いいね」と言う。
非エンジニアこそプロダクトを作るべき理由でも書いたが、ドメイン知識がある領域で作ることが最大の成功要因だ。
失敗パターン5: 一人で全部やろうとする
よくある経緯
「AIがあれば一人で全部できる」と思って始めた。UIは作れた。データベースも繋がった。でもデプロイでエラーが出た。セキュリティ設定がわからない。ドメインの設定で詰まった。1つずつ調べながら進めているが、1ヶ月で10歩も進んでいない。
なぜ致命的か
AIツールはプロダクトの70%を作るのに最適化されている。残りの30%——セキュリティ、インフラ、運用設計——はAIが苦手な領域だ。この30%を一人で埋めようとすると、学習コストだけで数ヶ月かかる。
さらに、セキュリティの知識が不十分な状態で「たぶん大丈夫」と判断してリリースすると、脆弱性を抱えたまま公開することになる。「知らなかった」は、ユーザーのデータが漏洩したときの言い訳にならない。
回避策
「作る」と「仕上げる」を分ける。
自分は「作る」に集中する。ドメイン知識を活かしてUI設計し、機能を作り、ユーザー体験を磨く。「仕上げる」——セキュリティ・インフラ・デプロイ——は、得意な人に任せる。
全工程を開発会社に丸投げするのではなく、AIが苦手な部分だけを依頼する。これなら費用は全部外注する場合の1/3〜1/5で済む。
一人で全部やることが偉いわけではない。適材適所で分業する方が、プロダクトもユーザーも幸せになる。
失敗を避ける人がやっていること
5つの失敗パターンに共通するのは、「AIツールへの期待値がズレている」ということだ。
AIは「動くもの」を作る天才だ。しかし「正しいもの」を作る判断、「安全なもの」に仕上げる技術、「必要なもの」を見極める目は、人間の側にある。
バイブコーディングで成果を出している人は、例外なく以下の3つを実践している。
- スコープを最初に絞り、追加の誘惑を断つ
- セキュリティの最低ラインを最初にクリアする
- 自分の得意領域で作り、苦手領域は人に任せる
道具が強力になった分だけ、使う人の判断力が結果を分ける。
→ バイブコーディングの始め方と各ツールの選び方はvibe coding完全ガイドで解説している
→ 「作れたけど公開できない」という状態なら「最後の30%」完全ガイドを参照